骨粗しょう症と歯科治療の関連性

骨粗しょう症とは、骨の量が減ったり、骨の組織が壊れることによって、骨が脆くなっていくものです。

 

骨粗しょう症の初期は、全く症状が出ないので、気付くのが遅くなってしまい、
最終的に骨折などで整形外科で診察してもらい、骨粗しょう症と分かることが多いです。

 

男性と女性を比較してみると、女性ホルモンが関与していることもあり、
1:3の割合で、女性に多いとされています。

 

骨は、自分では全く感じることはありませんが、作り変えられている組織です。

 

骨の中では、破骨細胞という骨を食べてしまうような細胞と、
骨芽細胞という新しい骨を作る細胞が交互に働いています。

 

 破骨細胞が骨を食べ過ぎているような状態が続き、骨粗しょう症になります。

 

※骨粗しょう症のお話とは異なりますが、上記の絵の中に、ガンの細胞がいます。
 ガンというのは、破骨細胞が食べたところの隙間にどんどん入っていきます。
 これが、いわゆる『骨転移』、骨にガンが転移してしまう状態です。
 ガンの患者さまで、骨に転移するのを予防するために、
 ビスフォスフォネートという薬を飲むことがあります。

 

ビスフォスフォネートは骨の表面に付着します。
破骨細胞は骨を食べずに、ビスフォスフォネートを食べます。

 

このため、骨粗しょう症の(進行を止める)薬として、ビスフォスフォネートが使用される訳です。
同時に、ガン細胞も、破骨細胞によって骨を食べられないので、入る隙間がなくなり、
骨転移の予防のため使われます。

 

※ビスフォスフォネートには、注射薬と飲み薬があります。

 


 【 顎骨壊死 】

ビスフォスフォネートを飲んでいて、歯科へ行き、
薬のことを告げずに抜歯してもらった。
そしたら顎の骨が腐ってしまった。

 

ガンの転移の予防のため、
ビスフォスフォネートの注射を打っていたら
何もしていないのに、顎の骨が腐ってしまった。

 

このようなお話を最近、耳にするようになりました。

しかし、腕や足など、他の骨の部分に関しては、壊死したという報告は一切受けていません。
(2010年9月10日現在) 

 

なぜ、顎の骨だけに壊死が起こるのか・・・・

破骨細胞と骨芽細胞によって、骨は常に新しいものが作られています。
その速度が、顎の骨は、他の箇所の骨に比べて10倍ほど速いといわれています。 
このため、血液の中に ビスフォスフォネートが流れている途中で、
顎の骨はどんどん新しく作られるので、ビスフォスフォネートが たくさん入り込む訳です。

それが、顎の骨にしか症状が出てこない理由とされています。

 

 なぜ、壊死が起きてしまうのか・・・・ 

破骨細胞がビスフォスフォネートばかりを食べて、骨を食べなくなるので、骨は丈夫になるのですが
丈夫になっているだけで、新しい骨は全く作られません。
破骨細胞が食べたところに、骨芽細胞がくっついてくるので、
新しい骨を作る作用が全く起きないのです。

 

骨は強くなりますが、どんどん古い骨になっていってしまうという副作用が
起きてしまう訳です。
やがて、古くなってしまった骨は死んでしまいます。

 

 

【 ビスフォスフォネートによる顎骨壊死の診断基準】 

下記の事項が当てはまる場合にビスフォスフォネートによる顎骨壊死と診断されます。

1.ビスフォスフォネートを現在飲んでいる。又は、過去に飲んだことがある。
2.お口の中や顔の部分で、露出してしまっている骨の部分があるか否か。
3.抜歯をすれば骨の一部分は露出するが、2の症状が8週以上続いている。
4.顎骨への放射線治療を受けたことがある。

 

飲み薬の場合は、3年未満であれば、特別、お口の中が汚いなどなければ、
予定している抜歯・手術などは、特に延期しなくても良いとされています。

ビスフォスフォネートを3年以上飲んでいて、尚且つ、ステロイドの薬を飲んでいる場合は
3ヶ月間、お薬を止めていただき、手術を行い、それから2ヶ月間待って、
ビスフォスフォネートの薬を再開しても良いとされています。

 

 

ビスフォスフォネートによる壊死は、どれくらいの人に起きるのか・・・ 

注射を打っている人・・・0.8~12%
飲み薬を飲んでいる人・・・0.01~0.04%

 

※基本的には、3年以上 ビスフォスフォネートを使用するとリスクが高くなるとされています。
 

 

これからビスフォスフォネートを使用するのであれば、先に、歯科治療・抜歯をしておくと
良いと思われます。

※ビスフォスフォネートは、「骨粗しょう症のお薬」ではなく、
 「骨を強くするお薬」という感じで処方されます。
 骨粗しょう症でなくても、処方されることもあります。

 

【 患者さまへのお願い 】
●歯医者さんへ行く時には、必ずお薬手帳をご持参ください。
●どんなに些細な体調の変化でも、治療前にお知らせください。
●お口から美味しく食べることができる幸せを感じてください。